ゆっくりと、しかし確実に
ビットコインは、いくつかの重要なオンチェーンのコストベーシスに接近し、強い抵抗線に直面している。初期の兆候では、需要が前向きに変化し、市場の取得価格は収束しているため、ビットコインの保有者層は、強い決意を持つ人々によってゆっくりと、しかし確実に飽和状態になりつつある。
米国が4回連続で75bpsの利上げを実施したことを受けて、ドルインデックスは若干引き戻され、世界の株式市場は束の間の休息に入った。しかし、債券市場のストレスは依然として続いており、イールドカーブの前後は一層逆転し、特に10年物のリスクフリーレートに対して3ヶ月物国庫短期証券が顕著である。
これを受けて、ビットコイン価格は比較的小さな上昇に転じ、回復を試みる最初の試練として、主要なオンチェーン・コストベーシスの上昇圧力がある。この価格動向は、HODLerの動きは鈍く、資産クラスが弱気市場の底から長い上昇を始めようとする中で、システムに再び戻ってくる最初の需要の兆しによって支えられている。
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HODLerは依然に堅調
HODLer ネットポジション変化指標を用いて彼らの売却行動を調べることによって、HODLerコホートの評価から分析を始めることにする。これは、オンチェーンで最も休止状態の保有されたまたは失われたコイン供給量の30日間の変化を追跡するものである。
HODLerの行動は、2021年5月における売り相場で二分化していることが観察されている。
・🔴この転換点の前に、HODLerは積極的にコインを売却し、サイクルにおける最高値形成時に利益を実現したことを見ることができる。売却のピークは-150k BTC / 月であり、その過程で合計-450k BTCを売却した。
・🟢価格の急落後、HODLersの売却行動は蓄積レジームに移行し、+40k BTC / 月のスピードでコインを蓄積した。このレジームは、8ヶ月間で+500k BTCの累積を伴う流入に至った。
このプロセスにより、このサイクルで売却されたコインの蓄えが完全に補充され、保有されたコインと失われたコインの指標は新たなATHまで押し上げられた。
保有されたコインに対して反対の供給領域は、ビットコイン経済の日々の取引で活発に参加している「ホットコイン」と考えることができる。
市場で入手可能な6ヶ月未満の若い供給は、2022年5月以降、歴史的な低水準に留まったまま減少し続けており、現在の市場に存在するHODLingの極端なレベルをさらに強調している。
次に、特定の年齢層が保有する米ドル建ての資産を調査できる実現総額HODL波線(Realized Cap HODL Waves) を評価する。3ヶ月未満のコインを分離することで、投機的な投資家層の資産をほぼ正確に把握できる。
現在、若いコインが保有する米ドル建ての資産は史上最低で、ネットワークの実現総額のわずか10%だけを占めている。バイナリーシステムにより、これは3ヶ月以上の資産が、ネットワークにおける実現総額の観点から相対的および絶対的にATHに達したことを意味する。このことは、HODLerの集団がこれまでで最も支配的であり、世界の資本市場における持続的な課題にもかかわらず、消費と売却を断固として拒否していることを示唆している。
次に、実現HODL比率を用いて、若いコインと成熟したコインの間で保有する資産のバランスをマクロスケールのオシレーターで比較する。これは、次のようなフレームワークで考えることができる:
・RHODL比率の上昇トレンドは、新たな投機的な買い手によって保有される米ドル建ての資産の優位性が高まっていることを示唆しており、強気市場やビットコイン市場の高値近辺において典型的なものである。
・RHODL 比率の下降トレンドは、古いコインによって保有される米ドル資産の優位性が高まっていることを示し、長期的な保有の増加や蓄積行動を示唆している。
・RHODL 比率が横ばいでレンジ内で推移している場合は、古いコインと若いコインの優位性における変化率が平衡状態にあることを示す。この過渡期は、売却市場における高値や蓄積市場における底値などの市場の転換点付近でよく観察される。
11月のATH以降、下降トレンドにあったRHODLの下降角度は軟化し始め、若いコインと古いコインが均衡し始めたことを示唆している。このパターンは、2018-19年の市場における安値近辺で観察されたものと同様の水準と期間で発生している。
💡 新しいダッシュボードを公開
新しいHODL波動ダイナミクスダッシュボードを公開し、様々な年齢層で成熟するビットコイン供給を調査している。
ビットコインのダッシュボードは、Glassnodeのメンバーが問題を解決し、市場における重要な疑問に答えることができるよう、新しくデザインされている。新しいダッシュボードには、スタジオ指標、カスタムワークベンチ構築、ビットコイン市場の主要トピックに関するアナリストによるメモという一連を解説するセットが含まれている。
調整済みリザーブリスク指標(原著者@hanstheredによる新バージョン)は、売却によるインセンティブと長期の休眠コインによる実際の売却との間のバランスを定量化する循環オシレーターである。
・調整済みリザーブリスクの上昇トレンドは、売却のインセンティブが高まり、利益の実現が市場の主要なメカニズムになりつつあることを示唆している。
・調整済みリザーブリスクの下降トレンドは、HODLingの機会が増えていることを示し、したがってHODLingが市場の主要なメカニズムになりつつあることを意味する。
蓄積期間の底値形成は、調整済みリザーブリスク指標によって、以下のような構造によって行われる:
・🟥段階1: ブローオフトップ(blow-off-top)後の価格変動に伴い、売却のインセンティブが崩壊し、トレーダー市場は突然終了する。時間の経過とともに、段階的な蓄積とHODLingが支配的なメカニズムになる。
・🟧段階2: 市場がコインを売却するためのコストが最大に近づいていることを認識し、HODLing行動はピークに達して弱気市場の最悪期が過ぎ去る。
・🟩段階3:新たな需要の参入、利益の獲得、底値の形成により、売却のインセンティブが回復の兆しを見せ始める。
現在、調整済みリザーブリスクは段階3に入ったようで、上記で観察されたHODLing行動のピークと一致しており、売却のインセンティブが高まる体制に移行する可能性を示している。言い換えれば、コインを長期間保有している人が、今後は売り圧力の支配的な供給源となる可能性が高い(2021-22年のサイクルから売り手が疲弊する可能性があるというシグナル)。
関心の高まり
我々のノードのメンプールをヒットする転送された全てのコインが継続して勢いがあることは、わずかではあるものの、ビットコイン取引において顕著で一貫した変化が起きている。このような変化は、潜在的に建設的な需要の変化を示す最初の兆候である。
この傾向はまだ初期段階であるが、監視すべき対象である。
任意の日のビットコインネットワークによって決済された送金量を分析すると、2021年1月から5月における高値である130億ドル/日のピークから、今日の30億ドル/日弱のサイクルにおける低値まで大幅に減少しており、これは-77%の減少を意味している。
しかし、安定化の兆しが見え始めており、9月の安値から1日の取引量は増加し、現在は1日30億ドルから40億ドルの間で推移している。
上記のように、個人投資家の代名詞ともいえる若いコインの存在感は、2021年5月の売り相場以降から薄れてきている。これは、日々決済される小口送金額の減少にも表れている。
0ドルから10ドルまでの取引は、2021年1月に1日430億円だったものが、現時点では1日2200億円と、-49%という著しい減少を見せている。それでも、上昇局面の出現に素早く対応する傾向がある、これら小口の送金量貢献には、安定化の初期兆候が見られる。
この特徴は、2018年の底値形成期にも見られたものである。
一方、100万ドル以上の取引では、大口参加者の総量が減少を続けており、正反対の構造が形成されていることが分かる。これは2018年の底値と類似しており、大口参加者による取引量は実際に著しく出遅れ、送金量が安定するのは強気トレンドが確実に確立されるまで待つ形となった。
この観測は、小口と大口による相対的な活動状況(Relative Activity of Small and Large Entities)指標 によって確認できる。この指標は、米ドル建てのビットコイン取引量における観察可能な正の歪度を考慮している。ここでは、中央値(小口、🔵)と平均値(大口、🔴)の取引量における7日移動平均と365日移動平均の間の比率を比較するオシレータを構築している。
もう一度、2018年の底値における小口と大口の活動の構造の類似性を明らかにする。価格行動の最終的なキャピチュレーションの後、小口の活動は増加し、2019年と2020年の急上昇において効果的に先手を打っている。小規模サイズの取引の流入を示唆しており、したがって需要の回帰の初期兆候を示すものである。
前述した論題はは、中央値のRVT比率を分析することでさらに検討できる。この指標は、実現総額で示されるネットワーク評価と、送金量中央値で示されるリテールの参加レベルの存在との間におけるバランスを比較するものある。これは、現在のネットワーク評価額に相当する「中間的な」トランザクションの数と考えることができる。
・中央値のRVT比率が上昇すると、均衡に達するまでリテールの存在が継続的に追い出されることを示唆する。
・中央値のRVT比率の減少は、一般的にリテールの参入が増加していることを示す。
・中央値の RVT比率が安定するのは、リテールの参加率とネットワークの評価額の両方が一定のときであり、ネットワークの利用が均衡していることを示している。これは歴史的に、マクロ規模における過渡期と関連している。
LUNA-USTの崩壊によって引き起こされた売り相場の後、リテール規模の投資家の存在は実現総額と均衡しており、投機的で信念の弱い投資家に対する一掃が起きていることを示唆している。しかし、2019年の先行事例と比較すると、現在のレジームでは持続期間という要素が欠落しているように見える。
製品アップデート
10月はAccointing.comの買収を発表し、また引き続き新しい指標やワークベンチ構築、ダッシュボードなど一式をリリースするなど、Glassnodeにとってエキサイティングな月となった。10月の製品アップデートの概要は、こちらをご覧ください。
高いコストベーシス
ネットワーク全体に需要の兆候が現れる中、特に長期投資家が売り手として関与している可能性がある場合は、今後の市場の関心レベルを評価することは賢明なことといえる。そのため、長期保有者、短期保有者、そしてより広い市場に対するオンチェーン・コストベーシスを評価する。
・短期保有者のコストベーシス🔴と実現価格🟠はともに21.1kドルとほぼ同じ水準で取引されており、市場はこの水準でせめぎ合っている状態である。
・長期保有者コストベーシス🔵は、23.5kドルで取引されており、最近のボラティリティは乗り切ったものの、今後の安定性には不安が残る。
短期保有者のコストベーシスはここ数週間で顕著に低下している。これは主に、WoC44で議論した大量なコインの再分配が原因である。これは、短期保有者の平均取得価格を市場価値に近づける作用があり、新規参入者はますます有利な立場にあることを意味する。
第二に、これら3つのオンチェーン・コストベーシスが近接していることである。これは、平均的なビットコイン投資家が、保有時間に関係なくコストベーシスを収束させていることを示しており、投資家集団がある程度均質化されている(いわば投資家心理のリセット)ことを意味している。
サマリーと結論
HODLerが保有する金庫にはコインが流入し続け、保有量を新たな上限値に押し上げているため、価格に敏感でないHODLer層は依然として安定している。HODLerクラスが保有する資産もまたATHに達しており、利確へのインセンティブが高まり始めると、HODLerの強さがピークに達する可能性がある。
HODLerが底値を維持しようとする中、短期保有者はオーガニックな資本をシステムに流入させ、重要なレベルに対する安定化を支える必要がある。これは、メンプール活動における構造的な変化と、小口による活動の急増の両方によって証明されており、取引の検証とネットワーク利用の需要がゆっくりと、しかし確実に高まっている。
グローバル市場において前例のない状況にもかかわらず、ビットコインの構造的な価格変動は、市場全体のコストベーシスと短期保有者のコストベーシスの両方に向かって進行している点は、以前のサイクルと同様である。これらの抵抗線の反転が確認されれば、今後における長く困難な道のりの中でも回復の兆しが見えるため、今後数週間はこれらの重要なレベルに対する反応を監視することが不可欠となる。
多言語チャンネル
新しいソーシャルチャンネルが立ち上がったことを喜ばしく思う。
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